- 念願のスタイリストデビュー目前に、5年勤続したサロンを退職。“自分の知らない世界をもっと見たい”という純粋な探求心からセカンドキャリアがスタート
- 美容師を辞めて、待ち伏せていたのはフリーランス・結婚・出産という予想していなかった展開
- 学歴・職歴不問。フラットな組織で、目の前の目標を3年間クリアし続けた結果、取締役に抜擢
- 悩んでいるうちは、考え抜くまで大きな決断をしない。小さな覚悟と決断の積み重ねが、大きな転機に繋がる
念願のスタイリストデビュー目前に、5年勤続したサロンを退職。“自分の知らない世界をもっと見たい”という純粋な探求心からセカンドキャリアがスタート
ー 元々は美容師だったところから、今はベンチャー企業の経営者ということですが、美容師として働き、退職するまでの心境の変化について教えてください。
小学生の時から、「一人の人生に継続的に関わり続けることが出来る仕事」として個人に寄り添うことが出来る美容師の仕事に憧れていました。
兄も姉も進学校に進み、大学に通っていたこともあり、美容師になる道と、大学に進学する道をどちらも選べるように、県内の進学校に通っていました。高校の先生たちからは、「本当に美容学校に行くの？」と何度も確認されましたが、人に寄り添える仕事をしたい、という気持ちが強かった私は、自分の考えを突き通し、東京の専門学校へと進みました。
ー 高校時代から自分の意志がはっきりあったんですね。
そうだったかもしれません。
表参道・銀座を中心に展開しているブランドサロンに入社してからは、毎日息をつく暇もなく朝から夜遅くまで忙しく楽しく働いていました。2年目の頃から社長のアシスタントとして、撮影現場等に同行する仕事が中心になり、自分の練習と後輩の育成指導をする時間、現場との両立に必死な毎日でした。
5年目に入り、スタイリストデビューも控えている中、体調を崩して入院することに。入院中、唐突にできた時間に、初めて「この先の自分の人生」に向き合うことになりました。このままスタイリストデビューをしてサロンワーク中心の人生も幸せだろうと思う一方で、体調のこともあり美容師にこだわらない人生も楽しいのではないかと考えるようになりました。
新卒入社して5年間必死に走ってきた私にとって、初めて自分と向き合う時間になった入院期間は、とても大切な時間だったと思います。悩み抜いた結果、何がやりたいという明確な気持ちもないまま自分の知らない世界や視野を広げていきたいという気持ちで大手美容サロングループを辞めることにしました。
美容師を辞めて、待ち伏せていたのはフリーランス・結婚・出産という予想していなかった展開
ー「やることを何も決めずに退職」というのはなかなか思い切ったチャレンジでしたね。美容サロン退職後は何をされていたのですか？
美容サロンの退職後は、1ヶ月ほどはいろんな友達に会い、ほとんど仕事はせず、フリーランスとして撮影やブライダルのヘアメイクを中心に少しづつ仕事を増やしていきました。スタジオの裏方や美容学校の講師、海外での着付け教室を開催。自分のペースでなんでもチャレンジしていくという気持ちで働いていました。
3年ほど経ったタイミングで、結婚という転機が訪れます。ほどなくして、妊娠が発覚。常に大きな荷物を持って動き回る仕事だったこともあり、体力的に難しくなっていきました。まずは出産に集中しよう、と思考をシフトし新婚生活、妊婦ライフを楽しむことに。
ー 割と急に来た結婚・出産。人生、本当に何があるか分からないですね。
そうなんです。ですが、出産を経て、数カ月ほど経った頃には、それまで忙しく動き回っていた性格から、「少しで良いから働きたい」と思うようになりました。
ー だいぶ出産後、早いタイミングからそう思われていたんですね。
はい。そんな時タイミング良く、美容サロン時代の先輩が立ち上げた会社で働いていた元同期から、「少し手伝ってほしい」と言われてLiMEという現在在籍するスタートアップでも週1回働くようになりました。美容サロン向けの販売・予約管理SaaSのカスタマーサクセスを担当することになり、29歳にして初めてPCを使った仕事に挑戦することに。勿論“Slack”さえ知らなかったです。笑
学歴・職歴不問。フラットな組織で、目の前の目標を3年間クリアし続けた結果、取締役に抜擢
ー 週一勤務だったところから、どのタイミングでフル勤務に移行されたんですか？
スピード感があり、プロダクトの世界観に心底共感できるLiMEでの仕事は、半年後には気づいたら頻度が増え、週3回になっていました。最初は業務委託でしたが、2022年4月に週5の正社員に転換しました。意思決定の理由は、このメンバーと一緒に腰を据えて会社を伸ばしていきたい、と素直に思えたからです。
ー 取締役になった経緯はどんなものだったんですか？
2023年4月にLiMEの取締役への就任を打診された時に、自分が適任なのかと迷いましたが、自分の取締役就任の打診を知ったメンバーたちが、思ってもいなかった程に背中を押してくれたのが嬉しく、覚悟を持ってやってみよう、と決断しました。
ー そんな風に思えるなんて、素敵な会社・仲間ですね。
はい。LiMEは美容サロン時代の先輩（美容師）が立ち上げたスタートアップで、もともと事業にも開発にも知見がないメンバーで始めた会社です。そういった背景もあり、学歴・職歴不問で多様なメンバーの成長・活躍を促進していく風土があります。時短でもスキルアップ目的でもOK、未経験なら丁寧に育てて一緒に成長していく！というこのカルチャーがとても好きです。
ー 約3年のビジネス経験から、取締役への就任は、なかなか聞いたことがないです…！何が取締役抜擢に繋がったと思いますか？
自分にはまだまだ課題が多いですが、強いて言えば“覚悟”と“やり遂げるところ”を評価してもらったのかもしれません。具体的には、セールス部署が立ち上がる際に「こんなにサロンにとって良いプロダクトだから売れないはずはない。」と思い、「私がセールスを担当してLiMEのサービスの良さを全国に広めていきたい」と、手を上げて今では全国のサロンで導入していただいていることが評価してもらえたのかもしれません。あとは全体を俯瞰して冷静に課題を見つけるのが得意だよね、と言ってもらえたりしますね。
ー えー！自分からセールスがやりたい！と打診するなんてだいぶ前のめりですね。その原動力はどこから来ているんでしょうか？また、今後の展望があれば教えてください。
たしかにセールスと聞くとあまり前のめりになる人は少ないかもしれないです。自分自身美容師経験があるのでこんなサービスがあればもっと便利だなあと思っていたことを今の会社でつくっているので、お客様に良さが伝わりさえすれば、導入してもらえる自信があったのが一番大きいです。
仕事においての原動力で言うと入社してくれたメンバーの結果が出て、楽しそうに働いている姿を見た瞬間です。将来的には、更に作り上げていきたい世界を形にして美容業界になくてはならない喜んでいただけるサービスとして成長させていきたいです。そのためにも社内の一人ひとりが前向きに働けるように、メンバー間におけるコミュニケーションを大切に、環境や仕組み作り、フェーズに合わせた強い組織作りにも力を入れていきたいです。
悩んでいるうちは、考え抜くまで大きな決断をしない。小さな覚悟と決断の積み重ねが、大きな転機に繋がる
ー 一歩踏み出したくても、なかなか決断できないという方が沢山いると思いますが、そんな方々にメッセージをお願いします。
同性の友人と会話していても、「（新しい決断をして）もし上手くいかなかったらどうしよう」という話になることがあります。私も、もともと自信があるタイプではないですし、ネガティブな可能性についてもよく考えます。リスクを把握しておくことはとても大事ですが、それ以上に踏み出してみることも重要なのかなと思います。
もし色々と悩んでいる方は、大きい決断からではなくできる範囲の小さい決断からチャレンジしてみると踏み出しやすいと思います。たとえ失敗してもその経験を成長に繋げることができれば、踏み出さなかった自分よりレベルの上がった自分になれる。自分の選択を正解にしていきながらチャレンジしたことで未来の自分にいい結果もたらしてくれると思っています。
ー こちらまで元気が出るインタビューでした。本日はありがとうございました！
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【プロフィール】
木村千尋（きむらちひろ）
美容室の顧客管理アプリケーション「LiME」を開発・提供するLiME株式会社にて取締役を務める。1989年大分県生まれ。高校卒業後、上京し美容学校へ進学。その後、大手美容サロンに入社し、5年間働いたのちフリーランスへ。結婚・出産を経て現在のLiME株式会社で働き始める。2023年6月より現職。
この記事は2023年7月時点の内容になります。
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