- 大学4年で就職活動するも、一度諦めかけた芸術大学受験にチャレンジ
- ロンドンの芸術大学では、ボイスレコーダーで録音した授業を3回繰り返し聞く日々
- “27歳の新卒”として日本で就職を決意。会社員とクリエイティブどちらも楽しめそうな資生堂に入社
- 「好きなこと」を仕事にすると自然と頑張れる。「好き」を仕事にするのは楽しい
大学4年で就職活動するも、一度諦めかけた芸術大学受験にチャレンジ
ー 現在のお仕事を教えてください。
2018年に資生堂に入社し、5年目。現在は資生堂で主にブランドのアートディレクターとしてCMやWEB、店頭ツールなどのクリエイティブを担当しています。入社して最初の1年間はデザインの基礎や資生堂書体を学び、体得しながら仕事をしていました。今は、ブランド以外にもコーポレート関係の仕事や、資生堂の研究所の社員と共作でプロジェクトを進めたりしています。
ー 大学4年生の時には就職活動されていたんですよね。
そうなんです。2013年入社を前提に色々な企業を受けていました。ですが自分の心にいまいち火が付かず、途中で就職活動を辞め、ロンドンの芸術大学への受験を決意。遡ればもともと高校時代は芸術大学に行き、将来はデザイナーになりたかったんですが、挫折してしまったんです。大学はそのまま内部進学し、小学校から一貫の同じ環境に進みました。ですが、そこでは挫折したコンプレックスを強く認識したまま過ごしている自分がいました。大学4年になり、就職活動が徐々に始まりましたが、美大からデザイン関係の道に内定をもらう友人を見るたびにコンプレックスが更に爆発。何か行動しないとこのままぼーっと過ごすことになってしまうと焦り出しました。
ー 周りの友人に内定が続々と出たり、行きたい企業が見つからなかったり。不安ですよね。
結構苦しかったです。そこで、高校時代の「芸術大学に進学しデザイナーになりたい」という夢に立ち返りました。一般的には、四年制の大学を出た後だったら日本の芸術大学の大学院を受験する方が自然な流れだと思うのですが、当時の私は”自由の効かない海外留学”の道を選びました。「自分は環境に流されやすいタイプ」だと分かっていたので、あえての決断。大きな決断だったけれど、当時は若さ故にあまり深く考えず勢いもあったのかもしれません。好き勝手な要望を受け入れてくれた両親には感謝してもしきれないです。
ロンドンの芸術大学では、ボイスレコーダーで録音した授業を3回繰り返し聞く日々
ー 英語の壁などある中、希望の大学に合格。茨の道のりだったのではないでしょうか。
受かったのは本当に奇跡でした。自分の作品のポートフォリオを英語で説明する面接があって。デッサンの勉強は高校生の頃からしていたのですが、私の場合はとにかく英語がネックでした。留学中は、初めは英語が分からなさすぎて、授業をボイスレコーダーで録音。3回は繰り返し聞きながら理解をしていきました。英語圏で働き暮らしていくというイメージは持っていなかったものの、努力を地道に重ね、インターンで現地採用して貰えるレベルまでは英語も上達しました。
ー 何故そんなに頑張れたと思いますか?
今となっては人生で一番努力した3年半でした。コンプレックスがバネになったんだと思います。今思い返せば、当時はSNSも怖くてみられませんでした。デザイン系の友人達が【ご報告】の文字と共にコンペ受賞などの報告をしているのを見ても自分の不安が大きいので、素直に受け止められない。それくらい必死に追い込まれていました。小学校の頃からの夢だったデザインの仕事。温室育ちで、あまりストイックに自分の将来と向き合ってこなかったんですが、蓋をしていたその気持ちにコンプレックスが重なって、結果努力に繋がったんだと思います。
“27歳の新卒”として日本で就職を決意。会社員とクリエイティブどちらも楽しめそうな資生堂に入社
ー 就職先についてはどうやって決めましたか。
海外で働くことに執着して職に就けないという状況に陥るよりは、海外から日本の就職に参戦しようと思いました。大学院を卒業した時は既に27歳だったのですが、新卒の皆さんに混じり就職活動を行いました。広告代理店と資生堂のデザイン職に絞り、結果的には3社から内定を貰いました。決断理由としては、元々メイクが好きだったのと、メーカーでありながら、自社でクリエイティブを完結出来るという資生堂の強み。資生堂のデザインは学生時代からの憧れでもあり、クリエイティブも会社員としての生活もどちらも楽しめそうな環境に惹かれて決めました。
ー 自分の今後のことに悩んだ時は、どのように解決してきたか教えてください。
それぞれの会社で働いた場合のメリットデメリットをすべて書き出して整理しました。書き出す作業では、自分の気持ちを素直に掘り起こして、自分ととことん向き合います。その後は、社会人経験豊富な先輩や親に相談して意見を聞いた上で意思決定に繋げました。
ー 今後の目標や展望はありますか?
今はコミュニケーション領域を中心に仕事をしていますが、社会のためになるようなブランドやサービスないしはプロダクト制作をしたいという気持ちも強くなってきました。そこで根本的なクリエーションをやってみたいんです。また、働き方という意味では、今後は自分でオンオフを上手くつけ、クリエイティブも楽しみながら働くというスタイルに移行できたら理想です。
ー 今の会社に居続ける魅力はどんな所にありますか?
入社してあっという間に5年が過ぎました。この会社にいてまだ満足できてないことがいい意味で多いです。プロジェクトに関してまだ一度も「0から100まで気持ちよくやり切った!」と思えていないですし。ですが、自分が担当したクリエイティブがお客様のもとへ届いていくのは何度体験しても嬉しい経験です。また、大企業だからこそ、なかなか自分一人じゃ出来ないような大きなプロジェクトに携われるという点もあります。資生堂の好きなところは沢山ありますが、なんと言っても「社内全員、美と真摯に向き合っている」ところ。どの部署の人もプロダクトに対してストイックで感覚の水準が高く、刺激になります。また、私自身がこれまで、女性特有の身体の悩みを抱えてきたので、そういった問題の解決に携われる機会もあり、今後の仕事も楽しみです。
「好きなこと」を仕事にすると自然と頑張れる。「好き」を仕事にするのは楽しい
ー 佐野さんが日々、頑張れる理由はなんですか?
昔の自分と違って、今は他人が気にならなくなってきて、マイペースに自分のリズムで働けています。あと、実は一度も自分が頑張ってると思ったことが無いんです。会社を出た後も広告やデザインのことをずっと考えていて。たぶん本当にこの仕事が好きなんだと思います。好きだから楽しいし走り続けられます。
ー 好きを仕事にするって素敵ですね。一歩踏み出せない人にアドバイスをするとしたら?
安定したところに片足、もう片足で刺激を求めてアンテナを張る。シンプルかつ中途半端だと思ってしまうかもしれませんが、初めの一歩としてはおすすめです。
ー 最近熱中していることってありますか?
ポッドキャスト配信です。5年くらいひっそりと、ラッパーとして活動している友人と脱サラした建築学生の友人と3人で月2回配信していて、ラップやお笑いなどカルチャーについての持論や、恋愛やキャリアについて好き勝手話して良い息抜きになっています。おじいちゃんおばあちゃんになった時に、自分が当時どう考えてたのか振り返れたら面白いよね、なんて思っています。ずっと続けていきたい趣味の一つです。
▼佐野さんが運営しているポッドキャスト配信:「ラジオ屋さんごっこ」
【プロフィール】
佐野りりこ(さのりりこ)
アートディレクター・デザイナー。
成城大学卒業後、渡英。ロンドン芸術大学セントラルセントマーチンズでデザインを学び、2018年資生堂入社。現在はマキアージュなど自社ブランドのデザイン・アートディレクションを担当。
この記事は2023年7月時点の内容になります。
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