ワークとライフは両立させるものではなく、調和させるもの
「ワークライフバランス」は、誰もが聞き馴染みのある言葉だと思う。ワークとライフ、つまり「日々の仕事とプライベート」、もう少し大きい視点でいうと「キャリアとライフステージの変化」などをうまく両立させる、という考え方である。しかし実際のところ、特に女性の場合はライフイベントとキャリアアップ・チェンジのタイミングが重なることがどうしても多かったり、どちらかを諦めなくてはいけないのではと感じたり、この先も両立が可能なのか、と不安を感じる人も多いのではないだろうか。
私自身、前職のCA時代は完全シフト制の勤務体系で曜日・昼夜問わず働き、プライベートの部分で我慢をすることもあった。このことも転職に踏み切ったきっかけの1つと言える。転職をした今は、長い人生の中でワークとライフ、どちらもその時々の自分に合う、良い状態を維持し続けることが私の理想である。
そんな中、最近私が出会った概念を紹介する。Amazon CEO ジェフ・ベゾス氏による「ワークライフハーモニー」である。ジェフ・ベゾス氏によるとワークライフハーモニーはその言葉の通り、ワークとライフを調和させていく、というものであり、決して競合関係にあるものではない、とのことだ。
どういうことか、まずは「ワークライフバランス」で考えてみる。
人生という一つの天秤の左右に、「ワーク」と「ライフ」が掛かっており、片方が重くなる時はもう片方を軽くすることでバランスを取る、というイメージが分かりやすいかもしれない。つまりワークとライフは対極にあるもの同士で、うまく両者のバランスを取ることで、人生という天秤の平衡を保つことが出来る。
一方「ワークライフハーモニー」の考え方だとどうだろうか。ワークとライフは人生というベン図を構成する要素であり、両者は八の字のようなもので繋がっているイメージである。どちらかが充実するともう片方の活力となり、それを繰り返して結果的に人生そのものの充実度が向上していく。
この考え方が今の私にとって、とてもしっくりきた。というのも、ワークライフバランスという言葉に若干の違和感を感じ始めていたからである。ワークライフバランスの考え方に当てはめると、ライフの充実度を上げるためにはワークを少しセーブする、といったことをすると思う。しかし転職してからの自分を振り返るとその逆で、仕事がかなり忙しく身体的に疲れることがあっても、マインド面では活力に溢れており、日々に充実感を感じていた。仕事が忙しいからこそ休日を大切に、楽しむようにもなった。
まさに、このワークライフハーモニーによる人生の幸福度を高めていくことが、私の理想なのではないかと思った。
自分にとっての幸せとは?
ワークライフハーモニーによって人生そのものの幸福度を高めていくには、「ワーク」と「ライフ」において、自分が何に幸せを感じるかを明確にし、時にはその上で環境を変えることが必要な場合もある。(私の場合は、転職が結果的に今の幸福度に繋がっている)さらに自分が大切だと感じるものと、同じくそこを大切にしている企業を選ぶことで、ワークライフハーモニーの実現に近付けるのではないか。
ここからは「ワーク」における幸せを少し分解して、考えてみたい。
もう少し明確な表現にすると、ここで言う幸せは、「ウェルビーイング」と言うワードが当てはまると思う。世界保健機関(WHO)憲章では、「ウェルビーイング」とは”身体的、精神的のみならず、社会的、経済的など全てが良い状態にあること”を指す。「ウェルビーイング」は「持続可能な開発目標(SDGs)」にも含まれている。そういった国の動きも後押しし、多くの企業がこのウェルビーイングに着目して、従業員向けの制度や施策の高度化に注力している。
またアメリカのリサーチ会社であるギャラップ社は、このウェルビーイングについて、5つの構成要素があるとしている。この5つの要素を詳しく見てみたい。
出典:https://www.gallup.com/workplace/215924/well-being.aspx
・Career Well-being
・Social Well-being
・Financial Well-being
・Physical Well-being
・Community Well-being
・Career Well-being
ここで定義する「キャリア」は仕事に限らず、ボランティア、育児、勉強、研究など日々の中で積み重ねた経験のこと。これらの活動を通して、得られる達成感や納得感によって高められる幸福度を指す。
・Social Well-being
人間関係に関するウェルビーイングで、職場や家族、友人との間で「信頼」や「愛情」を感じられていることを指す。
・Financial Well-being
経済的に安定しており安心して生活すること、また現状に見合った将来設計を立てながら資産管理や活用が出来ている状態のことを指す。
・Physical Well-being
心身ともに健康で充実しており、日常の活動に対するエネルギーが十分にあることを指す。
・Community Well-being
地域社会やコミュニティに属し、貢献実感や繋がりを持てている感覚があることを指す。
この5つ全てがどれも大切な要素だと思うのか、あるいは特にこれだけは譲れないと考えるのかは、人それぞれだと思う。自分にとっての「ワーク」における幸せの定義を明確にすることが大切だと考える。また、その上で環境を変える際の条件を検討したり、入社を考えている企業のことを調べると、ブレることがない自分の軸となり、ワークライフハーモニー実現の確度も上がるのではないか。
私の場合はどれも大切だと感じるが、その中でも特に、Career Well-beingが重要と感じる。つまりバランスが取れている企業であることは前提の上で、会社生活に全てを捧げるのではなく、余白で自己研鑽や兼業、ボランティアなどの外での活動・経験を可としてくれる柔軟な働き方が出来る企業、またそういった風土の企業に属することで、私にとってのワークライフハーモニーを実現出来そうである。
欲張りでもいいじゃないか
今後も続いていく長い人生を、より充実した幸せなものにしたい、と誰もが考えると思う。その中で、今の環境や状況に不安を感じる場合は、まずこの5つの要素のフレームワークで、自分にとっての幸せとは何かを考え、その上でワークライフハーモニーな生き方が出来る道を目指してみてはどうだろうか。
改めて私は、ワークとライフはどちらも自分の人生において等しく大切なものであり、片方のためにもう片方を我慢するのではなく、両方とも充実させ、その活力同士を相乗させていくことで、自分の人生を豊かなものにするべく、模索し続けたいと感じた。また本コラム執筆で「このように生きていきたい」という想いを改めて整理出来たことで、ある意味”欲張りに生きてもいいのだ”と自分を勇気付ける事が出来た。同じように感じてくれる方がいれば、大変幸いである。
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