【登壇者プロフィール】
青山 絵子(外資IT勤務・モデルヨガインストラクター)
外資系IT企業にて営業職として勤務。2019年にヨガインストラクターの資格を取得し、2020年より会社員とヨガインストラクターのパラレルキャリアをスタート。その他女性誌CLASSY.のモデルやインフルエンサー業、韓国での陶器の買い付けなども実施。
鳥山聡子(日系大手勤務・広報PR)
新卒で食品メーカーに入社。その後転職し、現在は自動車関連メーカーにてスポーツスポンサーシップのグローバル統括課長として従事し、社内の各種DE&I推進プロジェクトにも参画。2019年より複業で公益社団法人日本フェンシング協会のPRプロデューサーに着任、2021-22年は広報担当理事を兼任。2023年より、一般社団法人ジャパンバレーボールリーグ(Vリーグ)の広報プロモーション部に「複業転職」し、 Vリーグのプロモーションや2024年から始まる新リーグ立ち上げに伴う様々な改革の発信に取り組む。
りょかち(IT企業出身・フリーランス)
新卒でLINE株式会社に入社。アプリやWEBサービスの企画開発・コンテンツマーケティングに従事しながら、「りょかち」として、若者やインターネット文化についてのコラム、エッセイ・脚本・コピー制作を行う。2021年7月、これまで副業として従事していたライター業で独立。転職サービスのメディアを編集長として立ち上げ、経営者のnote運営、SNSコンテンツのシナリオコンテンツの制作等、幅広いコンテンツ制作に関わる。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。
- 副業を始めたきっかけは?
- 本業とのバランスをどのように取っているか
- 副業の経験が本業に還元されていい循環を生むためには?
- 本業における理解の得方や成果の出し方
- 今後の展望
- パラレルキャリアを実現するポイント
- 参加者からの質問
副業を始めたきっかけは?
笹川:どのようなきっかけで副業を始めましたか?エピソードを教えてください。
青山:私の場合は、いくつかやっている副業があるのでそれぞれのきっかけは異なります。ヨガのインストラクターの副業は、元々ヨガが好きで、より詳しく知りたいと思うようになりました。コロナ渦で在宅時間が増えたことをきっかけに資格を取得することができ、習得したことを忘れないためにもインストラクターのオーディションを受けて、現在はインストラクターとして活動していますまた、韓国が好きなので、韓国コスメの仕入れをしている会社のPRをしているのですが、この領域での仕事は、好きが高じていろんな方に声をかけてもらったことをきっかけに色々とお仕事をしています。そのほかはモデルやインフルエンサー業をしています。
笹川:自分の探求心から始めたものや、ご縁でつながったお仕事もあるんですね。
青山:探求心は強い方だと思います。先々のメリットを考えながら、気になったらすぐに飛び込んだことがお仕事につながっていると思います。
笹川:(以前の対談から)りょかちさんも編集の方から声をかけてもらったり、いい意味で種をまくのがお上手なイメージがあります。
りょかち:そんな風にいっていただき、ありがとうございます。。基本的には人から教えてもらったことや興味あることに乗っかってみています。周りの反応をみて自分のニーズや強みがどこにあるのかを市場に聞いてみたうえで、自分がやりたいのか、自分がどうそのチャンスを活かしたいのかを考えながら舵を切ることを繰り返して仕事になってきたのかなと思っています。
笹川:篠原さん、フットワークが軽いことは大事な要素ですよね。
篠原:周りに自分の好きなことや、自分の得意とする領域、業務領域等を話しておくとチャンスに繋がっていくと思います。それくらい小さなことから始めてみてもいいと思います。
笹川:鳥山さんはご自身で調べて、アクションを起こしているというイメージがありますがいかがですか?
鳥山:私は普段日系大手企業に勤めているので、自分のジョブローテーションを自分の意志だけで決めることはできません。社会人3年目の時に転職をしていて、その際に営業から広報職に転換したことが功を奏して、コミュニケーション、PR、ブランディングに興味を持てたのですが、そこでマルチにスキルを身に付けたいと思っても運次第なところがあり、モヤっとしていました。
どうやって会社の外でその機会を作るのか、会社で身に付けられることをベースとして活かしつつ、出来ることがないかと考え、最初はボランティアを探していたのですが、偶然副業・兼業限定の公募を見つけるというご縁があり、日本フェンシング協会のPR職という領域における副業のチャンスを掴みました。
笹川:ちなみに副業を継続していくことの工夫や気にしていることはありますか?
青山:時間の使い方(1日の中の時間配分)は変わりました。私の場合はヨガのお仕事が朝の7時、8時と早い時間から始まるので、前の日は絶対に夜家にいる、何時までに寝る、など自分の中でルールを決めています。副業をやりすぎて疲れてきたときは、内容を考え直すようにしています。あくまでも本業が最優先という形で支障が出ないように見直すようにしています。
本業とのバランスをどのように取っているか
笹川:本業と副業どちらも楽しんでいくためにはバランスが大事ですよね。
篠原:そうですね、本業があっての副業だと思いますし、副業側の方で働く方にとってはそちらを本業にしている方が殆どでしょうし、その辺の認識も正しくもつ必要がありますよね。本業・副業という表現のみならず、「複業」という表現の仕方もありますもんね。
笹川:鳥山さんがお仕事されている姿を何度も見たことがあるのですが、本業も副業も100%で向き合っていて、手を抜かない印象があります。どこにそのエネルギーはあるのですか?
鳥山:さきほど篠原さんがおっしゃっていた通りで、副業側の人にとってそれは本業だということを最初から肝に銘じています。普段「副業」と言う際にサブの意味の「副」をなるべく使わないようにしているのもそんな気持ちがあります。自分も仕事との向き合い方が100%でないと嫌なのと、価値がある思ったことには全力でコミットしたいと思っているので、副業を始めたときに腹をくくって「この数年は私は200%で仕事をするんだ!」と思いましたし、そこで成果を出さないとわざわざ副業をしている意味がないと思いました。
副業の種類にもよりますが、基本的は即戦力を求められていて、それに対してのフィーをいただいているため、それ以上の成果は出さないと副業先に対して失礼に当たると思います。
一方で、本業側に対しても後ろめたいことはしたくないと思っていて、副業を始めて最初の1年は本業側には一部の方を除いて副業については伏せていました。1年たった後、査定評価の時に本業での自分の成果を見てもらい、実は本業の裏ではこんな副業をしていて本業に支障ない範囲で行ってきたので続けます!と宣言しました。本業側に副業のせいで何か支障が出るということは自分でも納得いかないので、自分できちんとバランスをとったりするしかないなと思いました。
笹川:大手企業もスポーツ団体もどちらも軽い気持ちではできないミッションなので、自分を戒めながらも努力されているとお見受けしました。りょかちさんは努力の人ですが、引きでご自分を見るのが得意な印象です。本業とのバランスの話で何かありますか?
りょかち:本業の会社に入ったときに、優秀な人が多く、チャンスにも恵まれた部署にたまたま入ることができました。その時周囲の方に、副業はしないで本業に集中した方が長期的にはいいかもしれないよとアドバイスももらっていました。
特に新卒1年目だったので自分のパワーを分散するリスクもあると思っていたので、副業は土日しかやらないなどルールは決めて、本業に一番コミットしていました。
今は副業ブームという流れになっていて、副業をしないと劣等感を感じている人もいると思いますが、本当は本業に集中していた方が長期的にはいいという見方も実はあると思います。自分の本業を5年、10年頑張ったから副業に生かせるということもたくさんあると思うので、本業だけをやる選択肢もあるということを常に考えていた気もします。そのためにもこの副業は何のためなのか?を常に考えていたように思います。なんとなく副業をやりたいからやっている、お金がほしいからやっている、ということも大事ですが、結局は自分の体力をすり減らしているだけになってしまう副業もあると感じています。
自分にとって副業は、今のお金を稼ぎたいというわけではなく、将来的にライティングの仕事をやっていきたいと思っていたので、それ以外の仕事は減らしたり、何のための副業なのかを考えたりしながら、常にキャリアを選んできたかなと思います。
笹川:「やりたいからやる」で心を満たされて人生豊かになるということもすごくハッピーなことだと思いますが、長期的に続けていく上では、何のための副業なのかということも大事なことですよね。
篠原:できることが増えて、副業でも経験や信頼を積み上げることによってまたほかの会社から声がかかることもありますよね。経験を積んでいくうちに明らかにスキルの切り売りとなるような副業が多くなることもあると思っていて、そういう時に何のためにやってるんだろう?と自問すると、自分の成長とともに選ぶ副業の内容も変わってくるのかなと思いました。
副業の経験が本業に還元されていい循環を生むためには?
笹川:本業と副業を200%でやってみた結果、副業の経験が本業に還元されている、循環しているという感覚はありますか?
鳥山:あります。私の場合は本業でやりきれない経験を得るために副業をしています。やや専門的になりますが、スポンサーシップに企業側として関わっていましたが、スポーツをやっている団体、選手、チーム側の仕事をしてそちらの世界の理屈を学びたいと思って副業していたので、それがわかるとスポンサー側としても仕事のアウトプットが豊かになります。また広報、PRの面でも人脈がすごく広がったことが還元されました。それでまた新しい仕事の話もらったり、思いがけないコラボができたりしました。本業と副業で利益相反にならない線は引きますが、そこに抵触しない情報や経験値は積極的にどちらにも還元するように心がけています。
笹川:青山さんはいかがですか?
青山:私の場合は還元できているポイントは皆さんほど多くはないかもしれません。やりたいことをやるための土台が本業です。ヨガのインストラクター1本でやろうとしたとき時間の使い方も大きく変わりますし、レッスンの数もかなりこなしていかないとなかなか食べていけないなと思います。。私もりょかちさんのように自分の好きなことを1本でという世界に憧れていますが、自分が選んでいる世界がまだまだそこまで行かなったり、自分の実力不足だったりするので、好きなことを安心してやれるための本業という立ち位置にしています。金銭的な面では本業が副業に還元しているという感じです。
副業が本業に還元していることというと、人脈が広がったことでしょうか。ヨガやモデルはフリーでやっている人が多いのですが、本業は会社員としか出会う機会がないので、会社の外でいろんな人に会えることはいいなと思っています。
笹川:2パターン出てきましたが、共通は「世界が広がる」ということですかね?
篠原:そうですね。目的は様々で良くて、副業することによってハッピーになったり、新しい出会い含め、豊かになっていていいですよね。
笹川:副業にすることによって、楽しめる(どっちかがつらかったけどこっちにもいい影響がある)ということが私自身もあると感じているので、副業を始めてみるということはいいですよね。
本業における理解の得方や成果の出し方
笹川:会社によって副業への理解度は違いますか?
篠原:社員が副業をすることもそうですが、自社で副業を受け入れる体制も含め、理解度や進捗は企業によって様々だと思います。
例えば私がベンチャー企業で人事責任者をしていた時、個人として別の会社の人事コンサルのような仕事を引き受けたことがありました。普通に考えると利益相反になると思われる中、本業の人たちに相談したら、本業に支障がでなければ問題ない、と背中を押してくださったので、副業で得てきた学びや考え方を利益相反しない範囲で本業に還元することもできました。ん。
笹川:副業や自分の世界を広げたいと考えている中で、やりたいけど何から始めたらいいのかわからないという方もたくさんいらっしゃると思います。そういう方々にアドバイスはありますか?
篠原:みなさん若いうちから本業で経験を積み上げることも意識されてきてるんじゃないかと思うので、そうしているうちにもっと極めたいことが出てきたら副業でやってみるというのも一つですよね。または、青山さんのようにプライベートや趣味で気になることから何かできないかなと始めてみるのもいいと思いますよね。
笹川:韓国の商品を仕入れてみようというのは、どのように始めたんですか?
青山:そもそものきっかけは私が韓国にはまっていて、毎月渡韓していたので、毎月遊びに行くなら航空券、滞在費くらい稼げるようになりたいというのが最初のきっかけです。お皿の買い付けは全くリレーションがないところから始めていて、インスタグラムで気になったお店に直接連絡して会いに行って、日本に売りたいので買わせてくださいと手で持って帰ってきて、というのがスタートでした。誰でもできることですし、私も何かものを売るということはしたことがありませんでした。ブランドのPRなどのお仕事はそのようなお仕事をしている知り合いの方とランチに行き、相談をしたときにその流れで「うちで手伝ってみる?」という形で始まったのがきっかけでした。
笹川:行動力と探求心ですね!私もTBS時代に独立を考えたときにインスタグラムで理想的な働き方をされている方を見つけて、DMを送ってお茶してもらい、今でも仲良くさせてもらっています。今はいい時代なので直接相談してみるっていうこともできちゃいますよね。りょかちさん、副業何から始めたらいいかわからないという方へのアドバイスはありますか?
りょかち:全くゼロベースだとあまり想像がつかないですが、ちょっとでもやりたいことがあるのであれば私は自分の強みとくっつけて自分から営業してみたりするのもいいのかなと思ったりします。本業でやっていて強みの部分と何かを掛け合わせる、例えば、IT企業で勤めていてIT企業でライティングをやってみたい場合は、IT企業のことを知っていてライティングができる人も少ないので、技術的なレポートから始めてみるなど、「自分の得意」と「自分の好き」を組み合わせると新しく話を聞いてくれる人も多いのかなと思います。自分の好きなことや強みを整理することから始めてみてもいいのかなと思いました。
笹川:自分のできること、興味ある事の棚卸をすることですかね。本業をいかに早い段階で向き合って固めるかというところは議論の戻る場所ですよね。
篠原:登壇者の皆さんは、それぞれ軸がありますよね。本業で力がついたから差別化される仕事ができるようになってきているという感覚がありますよね。本業に向き合って、極めていくことを早めにやっていくとやれる範囲が広がりますよね。20代にどれだけ方向性決めていくか、苦労するかも大事なのかなと思いました。
笹川:20代を振り返ってみていかがですか?
鳥山:まさに20代を思い返してみると、軸を探していた時期でこの先何を軸に生きていくのだろうと考えていた時代だった気がします。ただ、最近は副業(お金を稼ぐこと)が目的ではなくて、何かやりたいことや広げたい世界を突き詰めたり自分の可能性を試していく手段のひとつがあくまで副業だと思っています。
「副業やりたいな」というタイミングではまだ副業を始めるタイミングではないのかもしれないです。ただ、それをきっかけに自分の軸を考えたり、どういう経験値を得たいのか、なぜ今の環境では得られないのかを棚卸したり、整理する良いタイミングなのかも。自分と対話するチャンスにすることにより、そのあとより筋のいい副業に出会えるかもしれません。
篠原:やみくもに副業を選んでしまうのではなく、本業で成長できる環境を作ることが最低限副業する前に大切なことなのかもしれません。
今後の展望
笹川:今後の展望はございますか?
青山:私は「これやりたい!」と思ったら実現するために後先考えずにその時やりたいことをやるタイプ。今の副業に1年後興味がなくなっている可能性も正直あって、また新しいことをやりたくなっている性格なので、何を頑張りたいとか今はないです。
ただ、今は本業は「生活するためのこと」と明確に位置づけていて、その代わりに副業で好きなことをするというスタイルでやっています。「好きなこと」で生活できる比率を少しずつ増やしたいなと思っていて、りょかちさんのような仕事スタイルがあこがれだと思うのでいつか実現できたらいいなと思っています。「その時やりたいこと」をこれからも頑張りたいと思います。
鳥山:やっぱり私のキャリアの軸は「コミュニケーション」という分野だなと感じているので、そこでのスキルを突き詰めていきたいなと思っています。一言で「広報、コミュニケーション」といってもインターナルコミュニケーション、IR、メディアリレーションなど多岐にわたります。それが一通りできた上で「ここが得意だよ」言えるようになりたいと思っているので、まだできていない経験がいくつかあると思っています。
会社は縦割りなので自分の領域がここからここまでと決められてしまっていることがあります。私が副業先で選んでいるようなところは一人でマルチタスクに様々な役割を兼任する必要があるところが多く、その分スピード早くいろんなスキルをブラッシュアップできるということもあります。一通りできるなと自信を持てるようになるまでは今の働き方で、本業である程度安定した収入、スキルを磨ける環境、ゆとりのある環境を持ったうえで、足りないところを副業で補いたいです。
最近の野望としては、スポーツビジネスの世界はお金にならない世界と言われているので、何とか自分のスキルや経験を使って、スポーツビジネスがもうちょっと夢のある仕事になるような世の中にしていきたいなと思っています。
りょかち:私も青山さんに似ているタイプで、あまり長期的な目標は持たないタイプです。基本的なキャリアのスタンスが「決められないくらいだったら決め続ける」なので、未来はわからないけれど決め続ける、今やりたいことをやり続けるというキャリアスタイルです。今のところ「書くこと」を中心にするというキャリアは達成できたかなと思っているので、その先に今はフィクションやシナリオをやりたいなという次の目標が見えてきました。今後数年間は、新しいスキルを身につけながら挑戦していきたいです。働き方の展望でいうと、フリーランスをやりながら週1で会社員をやるという働き方ができたら、より自由なキャリアを歩める人が増えるのではないかと思っているので、新しい働き方もいろいろ試しながらやっていきたいなと考えています。
パラレルキャリアを実現するポイント
・早期に本業に向き合い、基盤を作っている
・今も常に新しいチャンスを得るためにマイルール・勉強・ネットワークづくりなどを心がける
・自分のなりたい像を定義して、実行していく
・一つ一つの縁やつながりを大切に
参加者からの質問
笹川:視聴者の皆さんからご質問いただいています。
「本業をしているときのモチベーションの保ち方を教えてください。」とのことです。
鳥山:この土台があるから私は好きなことにチャレンジできるという思いもあります。本業では目的のために意識を注ごう、それ以外の雑音は耳をふさごう、または副業にいい意味で逃げて見えないようにしようとしています。
青山:私は本業は生活のためと、位置づけています。本業が楽しくなくなってしまったらそれはよくないので、最低限「仕事は嫌いじゃないよ」というスタンスは保ちたいと思っています。そのために楽しいこと、やりがいのあることだけ目を向けるようにマインドコントロールしています。
笹川:何か好きなことを見つけるということは何事にも大切ですね。
「ご自身の価値観や才能を周りに発信する方法はありますか?」
りょかち:思いつくことは全部やってみてはどうでしょうか。チャンスや少しでもにおいがするところに差し込んでいました。身近な方法が役に立つことが結構あるかもしれません。
笹川:1時間半あっという間でしたね。個人的に明日から頑張ろうと思いました!
篠原:活力が湧きました!
笹川:スピーカーの皆さん、素敵なお話をありがとうございました。