まずは「なぜ転職をしたいのか」、自分に問いかけてみる
転職をしたいと思った時、そこには何かしらの理由があるだろう。例えば、「給料を上げたい」「成長速度の速い環境に身を置きたい」「明確な評価制度に基づいて働きたい」など、年収や職種、ワークライフバランスの面からみた様々な要素で構成されているはず。とにかくこの転職理由を全て洗い出し、机に並べることからまずは始めてみてほしい。その後、並んでいる転職理由の中から優先順位をつけていく。このステップで「自分は何のために転職をしたいのか?」を言語化し、自身の転職活動における優先事項を明確にすること。これが転職活動の第一歩であり、企業選択の際の土台となる。
一方で、「言語化が難しい」「やってみたけど本当にこれで合っているのか?」と、はじめてのことに不安になる方はぜひ転職エージェントを利用することも考えてみてほしい。転職エージェントとは、キャリアアドバイザーが転職者のこれまでの経歴、志向性、転職への希望などをしっかりヒアリングし、一緒に棚卸ししてくれる心強い存在である。私もはじめての転職活動を行う際、転職エージェントにお世話になった身である。当初は自身で転職理由を洗い出すところまでは試みたものの、その後の優先順位をつけるフェーズが思いのほか難しく、キャリアアドバイザーと対話する中で取捨選択し、しっかりと優先順位をつけることができた。
過去、現在、未来に一貫性をもたせる
安斎響市氏の著書「私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~」の中ではこう述べられている。“ストーリーのない転職は失敗する”。自分が今まで、どんなことを考え、何を選択してキャリアを積んできたのか。過去の仕事の中で、どんなスキルや経験を身に付けてきたのか。
今後のキャリアについてどのように考え今日、この面接に来たのか。
そして、過去の経験は、一体どのように「この仕事」の中で生き、明確な成果を出して会社に貢献することができるのか。
これまで数回転職をしてきた私もこの考えに同意する。
その背景として、面接時に「転職回数が多いため、道筋無くただやりたいことだけをその場の気持ちで選んできたキャリアなのか?」と不信感を持たれ、お見送りとなるケースが相次いだという苦い経験があるからである。面接でこれまでの経験や転職理由を話す際、自身の中では軸をもって選択してきたキャリアではあるものの、限られた時間の中で聞き手に上手く伝わらず、一貫性がないと判断されてしまったのだ。
自身が面接官の立場になったと仮定し、長期就業ができて即戦力となってくれる人間かどうかをジャッジするために、「限られた面接時間の中で一貫性をもたせて話せるか」が選考の中でどれほど重要であるか、身に染みて感じたのである。
現実、一貫性のない部分があったとしても、過去から未来へのキャリアの道筋を一本の線で繋がるように話せるかが重要であり、ストーリーが描けていないと面接官から質問を受けた際、私同様「一貫性がない」と判断されお見送りとなってしまう可能性もある。
そもそもキャリア設計の観点からも、一貫性のない選択はあまりお勧めしない。例えば職種をガラッと変える場合でも過去の仕事内容に共通する部分があり、今後に活かせる要素があるのであればチャレンジしてみることも一つの選択肢ではあるが、全く共通点のない選択はキャリアダウンに成りかねない。きちんと道筋立ててストーリーが語れるキャリアになっているか、自分に問いかけてみてほしい。
転職をした先に見えた風景とは?
ここまで、はじめての転職活動について語ってきたが、“100%理想の職場を探すのではなく、自分の人生・キャリアを作るのは会社ではなく自分自身”ということを頭に留めておくことが、転職活動において大事な心構えであることを伝えたい。
転職をしたから絶対に幸せになれる訳でも必ず成長できる訳でもなく、あくまでも会社は可能性の詰まったフィールドであり、武器を手に入れスキルアップしていく中で、やりがいや満足感を得ることができるのである。
また、転職エージェントや家族、友人に相談しながら転職活動を進めることに関しては賛成だが、最終的な決断をするのは自分自身ということも忘れないでほしい。転職活動をした先に「やっぱり今の会社に残ろう」という結論に至ってもいいと思う。行動を起こし、自分自身の叶えたい部分・許容できる部分を再認識できる時間こそ貴重であり、その先にたどり着く場所が今の職場でも新しい職場でも、転職活動をする前と後では心持ちがきっと変わっているはず。
はじめての転職活動に不安や心配が付きまとうのは当たり前である。その中で一歩踏み出し、自分自身で正解にしていく努力が必要なのではないだろうか。本コラムが少しでもその手助けになれば嬉しい。
【参考文献】
安斎響市(2022).「私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~」.ソーテック社