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働く女性に役立つトピック

”免疫マップ”で変わりたいのに変われない自分の本当の理由を探る

【本コラムの担当と概要】 本コラムはNewMe編集部マーガレット(ペンネーム)が担当。大手日系企業で貿易事務などを経験後、人事部へ異動。キャリアの選択肢を増やすために国内でMBAを取得。現在1児を育てるママ。趣味はスポーツ観戦、家族や友人を招きご飯を食べること。 変わりたい。何度変わりたいと願ってもなかなか叶わない。そんな悩みを抱えている女性へ、変われない本当の理由に気づくヒントを紹介。ロバート・キーガンの研究によって明かされた免疫マップを実際に作成した例を紹介し、同じような悩みを抱えている読者が実践してみたくなるよう後押ししたい。

CONTENTS

「変わりたい」。誰しも一度はそう考えたことがあるのではないだろうか。むしろ、一度ではなく何度も。何度変わりたいと願っても、なかなか実現できない。そんなジレンマを抱えている人も多いはず。

今回は、ハーバード教育大学院で教授を勤めたロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーの著書、『なぜ人と組織は変われないのか』の中で提唱されている”免疫マップ”を紹介し、変われない本当の理由に気づくことができるのか、実践してみた筆者の感想を紹介していく。

変化に対して無意識に自己を守ろうとする免疫の仕組み”免疫マップ“

そもそも、”免疫マップ”とは、体内にウイルスなどの「異物」が侵入した際の免疫機能に準えて、変わりたいと願いながらも変化に対して無意識に自己を守ろうとする仕組みを構造的に把握するためのものである。当書では、免疫マップは、”変革をはばむ免疫機能を明らかにする思考の地図のようなもの”と記されている。
免疫マップは、大きく分けて①改善目標、②阻害行動、③裏の目標、④固定観念の4つに分けられている。

① 改善目標:改善したいこと
② 阻害行動:目標実現に対してどのような行動が阻害しているのか
③ 裏の目標:目標達成を妨げていることを理解しているのに阻害行動を取り続ける理由
④ 強力な固定観念:矛盾を生じさせる根底にある価値観

ここで、本書の中にある例を一部抜粋する。

(表1)

(『なぜ人と組織は変われないのか』p195より抜粋)

この例を見ると、キャシーは自分の感情をうまくコントロールしたいという目標に対し、他の人に助けを求めたり、依頼されると断れない自身の行動が邪魔をしている。そして、その行動は完璧な仕事をしようという強い情熱から生まれている。つまり、「阻害行動」は「裏の目標」を達成するための重要な行動となっているため、辞めることは容易ではないことがわかる。そして、「改善目標」と「裏の目標」という、相反する目標を達成しようとすることが矛盾を引き起こし、変革を阻んでいるというのだ。
さらに、完璧な仕事をしようという強い情熱は、”チームのよきメンバーだと思われたい”、”他者からの要求水準に達した行動をしなければ手を抜いていると思われる”、といった彼女自身の固定観念から引き起こされている。つまり、「裏の目標」は自身の強力な「固定観念」により生み出されているのである。
そして、この「固定観念」から脱却するためには、自身が「固定観念」に囚われているという自覚を持ち、主体から客体に転換して見つめ直すことが必要だと述べられている。

本書を通じてポイントとなる点を纏めてみた。

―なかなか改善できないのは、「改善目標」と「裏の目標」という二つの矛盾する目標を両方達成しようとしているからである。
―「改善目標」に対して技術的な解決策(つまり「阻害行動」自体を辞める)を振りかざすだけでは解決できず、「裏の目標」を理解し対処するよう促すことである。
―「阻害行動」の背中を押している「裏の目標」をあぶり出し、「裏の目標」を生み出している自身の「強力な固定観念」に対処しない限り、人は変われない。

何度も挫折してきた「ダイエット」をテーマに免疫マップを試してみた

さて、著書では様々なケースをアカデミックな要素も交えて書かれていることもあり、前半の紹介も堅苦しいところがあっただろう。もっと身近なケースで免疫マップを実践してみることはできないか、友人と協力して作ってみたマップが表2である。

(表2)

ダイエットしたいのに、なかなか行動に移せない、続かない、そういった経験が誰しも一度はあるはず。やる気はあるのに、具体的な改善目標を立てても続けられずに断念してしまった、という経験を思い出して欲しい。それは、飲み会が続いてしまったから仕方がない、頂き物は断れない、といった阻害行動を辞めようとしても、結局断れないのが自分であり、それは変えられないから仕方がないと諦めてしまう、ということではないだろうか。(少なくとも私には心当たりがある)それは、「阻害行動」に対して対策を打とうとしても、それを阻む「裏の目標」(この例で言えば、”周囲と良好な関係を築き続けたい”等)が存在するからである。そしてそれは自身に根づいた「強力な固定観念」によって支えられているため、簡単な課題解決とはいかないのだ。

実際に免疫マップを作成した友人の感想は以下の通りである。

”裏の目標を出す過程で知らない自分に気づけた”
“阻害行動へ対策を打つのではなく、固定観念を打破すべく行動する意識から始める必要があることに気づいた”
”ただ本質的な課題解決へのアプローチはかなりの努力と時間とモチベーションを要するだろう”

仕事でも活用できる免疫マップ

では、仕事ではどう活用できるだろうか。筆者が改善したいと思っている、”適切に他人に仕事を振り、自分で仕事を抱え込みすぎない”をテーマに、表3の通り、免疫マップを作成してみた。

(表3) 

頼まれると断れず、人に頼めない性格が自分で仕事を抱え込みすぎている原因となっていることが明らかとなったが、ここまでは自分でも何度も辿り着いていた。しかし、まさに理解できているのに変われない理由はここにはなく、その裏にある目標とそれを支える固定観念(則ち、なんでもこなせると思われたい自分がいて、その根底には過度に他者からの目を気にし、周囲からの期待にとにかく応えたいと強く思ってしまう)が改善したい目標を阻害していたのだ。

この固定観念を打破できるよう行動していくことが重要となるが、いずれも他者からの視点が関わっており、着目すべきは”まず自分がどうありたいのか”、”自分はどうなっていれば満足できるのか”、と自分に主軸を置いて見つめ直すことが第一歩だと気づいた。
さらに、これは自分で仕事を抱え込みすぎないという目標にだけ当てはまるものではなく、キャリアに対する価値観やプライベートでの悩みにも通ずるものがあると気づくことができた。

免疫マップを有効活用してみよう

この免疫マップは、本書の中でもコンサルティングのシニアパートナーから教育委員会、大学病院の外来病棟まで様々なシーンでの活用事例が紹介されている。さらに、本のタイトルにもあるように「人」だけでなく「組織」に対しても示唆に富んだ内容が含まれている。もし、ここまで読んでくださった方の中で、組織を束ねる立場にいる方がいたら是非手に取ってみてほしい。(参考までに、終章の目次を紹介しておく。)
変化したい、成長したいと思っているけれどうまくいっていないメンバーに対して、適切なアドバイスやサポートの助けになるヒントが書かれているかもしれない。
この免疫マップは、本書の中でもコンサルティングのシニアパートナーから教育委員会、大学病院の外来病棟まで様々なシーンでの活用事例が紹介されている。
さらに、本のタイトルにもあるように「人」だけでなく「組織」に対しても示唆に富んだ内容が含まれている。もし、ここまで読んでくださった方の中で、組織を束ねる立場にいる方がいたら是非手に取ってみてほしい。(参考までに、終章の目次を紹介しておく。)
変化したい、成長したいと思っているけれどうまくいっていないメンバーに対して、適切なアドバイスやサポートの助けになるヒントが書かれているかもしれない。

終章 成長を促すリーダーシップ ―リーダーはどのように道を示すべきか?

1. 大人になっても成長できるという前提に立つ
2. 適切な学習方法を採用する
3. 誰もが内に秘めている成長への欲求をはぐくむ
4. 本当の変革には時間がかかることを覚悟する
5. 感情が重要な役割を担っていることを認識する
6. 考え方と行動のどちらも変えるべきだと理解する
7. メンバーにとって安全な場を用意する

【参考文献】
ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー、池村千秋(翻訳)(2013).『なぜ人と組織は変われないのか』.英治出版

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